「東電裁判」無罪判決に抗議する

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公開日 2019年10月28日

更新日 2019年10月28日

 

2011年3月の東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人に対して、東京地裁は2019年9月19日、無罪判決を言い渡した。未曾有の被害をもたらした事故に対して、企業の責任を問うことを放棄した異様な判決である。
 

今回の裁判では、海抜10メートルの原発敷地を超える津波を予見し、事故を防げたかが争点となった。国は2002年に、福島沖でマグニチュード8.2前後の地震とそれに伴う津波が発生する可能性を予測した長期評価を発表しており、これに基づけば最大で15.7メートルの津波が原発を襲うことになるとの試算を、東電の地震・津波対策担当者は2008年の時点で得ていたという。現場社員が上層部に対策を迫ったにも関わらず、経営陣は何の安全対策も行わなかった。

 東京地裁は、指摘されていた防潮堤設置などの対策をとっても間に合ったか証明されていないとして、「事故を防ぐには原発の運転を止めるしかなく、3人には運転停止義務を課すほどの予見可能性はなかった」と結論づけた。しかし、電源設備の高台移転など対策はいくらでも取れたはずだ。具体的な対策に活かす必要がないのであれば、何のための長期評価なのか。東京地裁の判断は合理的とは言いがたい。

 さらに、判決文には「当時の社会通念の反映であるはずの法令上の規制等の在り方は、絶対的安全性の確保までを前提としてはいなかった」とあるが、他ならぬ、国や電力会社こそが、長年にわたり原子力発電の絶対的な「安全神話」を喧伝してきたのである。ひとたび原子力事故が起きれば、広範囲にわたり重大な被害がもたらされることは歴史が証明している事実であり、経営陣には最悪の事態を想定して、安全性の確保につとめる責任があったはずだ。

東京地裁の論理を認めるなら、企業や国に対して責任を求めること自体が不可能になる。事故は繰り返され、そのたびに誰も責任を取らない体制が温存されてしまう。
 

我々は今回の東京地裁の不当判決に抗議するとともに、国や東京電力に対して、一刻も早い原発事故の収束と、被災者、避難者への支援、そして原子力発電事業からの撤退を求める。

2019年10月25日

核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会

(東京反核医師の会)

代表委員  向山 新、 矢野 正明、 片倉 和彦

東電裁判無罪判決に抗議する[PDF:113KB]

 

東京地裁

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