「黒い雨」訴訟 国と広島県、広島市の控訴に抗議する

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公開日 2020年08月19日

更新日 2020年08月19日

 

 原爆投下直後に市内で降った「黒い雨」を浴び健康被害を受けた原告84人全員を被爆者と認定し、広島県、広島市に被爆者健康手帳の交付等を命じた2020年7月29日の広島地裁の判決に対し、被告である広島県と広島市は8月12日、控訴した。

 県と市は国に対して、判決を重く受け止め、控訴しないことを認めてほしいと求めていたが、国は「判決は科学的な知見が十分とは言えない」として控訴するよう要求したという。
 しかし、広島地裁判決でも指摘されたとおり、国が援護対象区域の根拠とする1945年の広島管区気象台の調査は、原爆投下直後の混乱期に被爆者への聞き取りによって行われたもので、調査範囲や収集データの限界がある。その後の調査から「黒い雨」がより広範囲で降ったことは明らかである。国の基準こそが「科学的な知見」を欠いていると言わねばならない。

 また、広島県・広島市は、国の控訴要請を受け入れた理由として、国が援護対象区域の拡大も視野に区域の検討を行う方針を示したことを挙げている。実際、安倍総理大臣は「これまでの最高裁判決と異なることから、上訴審の判断を仰ぐこととした」と述べており、一方で「広島県と広島市、被爆者からの要望を踏まえ、黒い雨地域の拡大も視野に検証していきたい」と述べている。だが、この姿勢は矛盾している。地裁判決を受け入れずして、援護対象区域の拡大などありえない。
 加藤厚生労働大臣は援護対象区域の再検討について「スピード感を持ってやっていく」と述べているが、実態は逆ではないか。原爆投下から75年となる現在、2015年の提訴時点の原告88人のうち16人が亡くなっており、最高齢の原告は96歳である。原告団長の高野正明氏が「命には限界がある。先延ばしすることでそれを望んでいるのではないか」と非難する通り、原告に残された時間は長くない。

 我々は、国と広島県、広島市が控訴を取り消し、一刻も早く不十分な現行の被爆者認定基準を見直すことを強く求める。


2020年8月19日
核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会
(東京反核医師の会)
代表委員 向山 新、 矢野 正明、 片倉 和彦

黒い雨訴訟控訴に抗議する[PDF:76.1KB]

 

 

 

 

 

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