「黒い雨」訴訟 高裁判決を支持するとともに上告断念を求める

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公開日 2021年07月19日

更新日 2021年07月21日

 原爆投下直後に市内で降った「黒い雨」を浴び健康被害を受けたにもかかわらず、被爆者健康手帳などの交付申請が却下されたのは違法であると訴えた「黒い雨」訴訟について、広島高裁(西井和徒裁判長)は2021年7月14日、原告84全員に被爆者健康手帳の交付等を命じた1審・広島地裁判決を支持し、国側の控訴を棄却した。

 高裁判決は、被爆者援護法第1条3号に定められた、3号被爆者の要件「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」について、原爆の放射線により健康被害が生ずることを否定できないことを立証することで足りるとした。また、黒い雨には放射性降下物が含まれていた可能性があり、黒い雨に直接打たれた場合以外にも、内部被曝による健康被害を受ける可能性があったことから、「原爆の放射線により健康被害が生ずることを否定することができないもの」と認められるとした。
そして、国が援護対象の根拠とする1945年調査に基づく範囲(宇田雨域)よりも実際の黒い雨の降雨域は広範であったと推認され、原告は全員、原爆投下後に黒い雨降雨域(宇田雨域、増田雨域又は大瀧雨域のいずれか)に所在していたことから黒い雨に遭ったと認められるとし、それにより3号被爆者の要件を満たすと結論づけた。

 高裁判決の論旨は極めて明快で、筋の通ったものである。同時に、原爆の影響との関連が想定される障害を伴う疾病に原告が罹患していることを根拠とした地裁判決に対して、現在疾病に罹患しているか否かではなく、健康被害が生じる「可能性」を問題にした点で、さらに一歩先に進んだ判断を示しており、黒い雨に遭ったすべての人に被爆者認定への道を開くものと評価できる。
 県と市は国に対し、上告断念を申し入れている。本訴訟の直接の被告は県と市であるが、国からの法定受託事務であるため、実際には国の被爆者援護行政のあり方が問われている。我々は、広島市、広島県、そして国に対して、上告を断念するとともに、高裁判決の精神を受け止め、一刻も早く原告以外も含め、原爆の被害にあったすべての人を救済すべく、被爆者認定基準を抜本的に見直すよう求める。

2021年7月19日
核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会
(東京反核医師の会)
代表委員 向山 新、 矢野 正明、 片倉 和彦

黒い雨訴訟の上告断念を求める声明[PDF:78.1KB]

 

 

 

 

 

 

 

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