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公開日 2020年03月06日
2020年2月25日、最高裁判所第3法廷は、広島、名古屋、福岡の3人の被爆者が原爆症認定を求めて争っていた「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」について、認定申請を認めないとする判決を下した。
今回の裁判では、原爆症認定の要件の一つである「要医療性」が主な争点となった。国側の主張は、被爆者援護法10条1項に規定されている「現に医療を要する状態にある」とは、治療適応の状態にあることを意味し、経過観察に留まる場合は要医療性が認められない、というものである。
しかし、同法10条第2項では1項に規定される医療の給付として、「診察」を挙げている。原告のうち2人は白内障のために定期的に通院し、カリーユニ点眼液を処方されている。もう1人の原告も、慢性甲状腺という自然治癒することのない病気を抱え、定期的に通院を行っている。まさに「現に医療を要する状態にある」と言うべきである。
そもそも、医師にとって経過観察が重要な医療行為であることは常識である。経過観察に留まる場合は要医療性を認めないとする国の姿勢は、原爆症認定の抑制のために持ち出された恣意的な運用に過ぎない。
2000年7月松谷訴訟最高裁判決は、被爆の実態を総合的に把握し、原爆の被害には未解明の部分があるという事実を踏まえる必要があることを明らかにした。被爆者援護法の精神は、国の責任において、被爆者に対して手厚い援護を行うことにこそあるはずだ。
今回の最高裁判決は、医療の常識から外れているだけでなく、これまで司法が積み重ねてきた被爆者救済の姿勢を自ら背を向け、被爆者の訴えを無視するものである。 被爆から75年が経ち、被爆者の高齢化が進んでいる。我々は医療者として不当判決に強く抗議すると同時に、国が責任をもって、一刻も早く原爆症認定の在り方を抜本的に改めることを求める。
2020年3月6日
核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会
(東京反核医師の会)
代表委員 向山 新、 矢野 正明、 片倉 和彦
ノーモアヒバクシャ訴訟最高裁不当判決に抗議する[PDF:104KB]
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