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公開日 2021年04月20日
更新日 2021年04月20日
政府は4月13日、福島第1原発の汚染水(ALPS処理水)を海洋放出する方針を決定した。海洋放出は2023年に開始され、約30年続く見込みだという。
東京反核医師の会は政府の決定に強く抗議する。
政府と東京電力は2015年、福島県漁業組合への文書中で「漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない」旨を述べている。福島県内・近隣の漁業者団体をはじめ多くの人々が反対している中での海洋放出決定は、住民との約束を反故にする行為である。梶山弘志経済産業相は会見で、「理解をいただく努力をする」と述べているが、先に決定してから理解を求めるということ自体、極めて不誠実かつ非民主的であり、被災者に寄り添う姿勢とは程遠い。
政府は、国内外での実績を強調し、「風評被害を最大限抑制するため」に、トリチウムをWHO飲料水基準の約7分の1まで希釈するとしている。しかし、タンクに貯蔵されている処理水は約125万トンに及び、通常稼働時の放出とは総量に絶対的な差がある。放出量について、「事故前の管理目標値(年間22兆Bq)を下回る水準とする」としているが、この値は事故以前のトリチウム海洋放出量の約10倍にあたる。
トリチウムについては、ベータ線が皮膚を透過できず、トリチウム水が人体の特定の組織や臓器に濃縮しないとして、危険性が少なく見積もられてきた。しかし、有機物と結合した場合、人体に長期間留まる可能性も指摘され、海洋放出を行えば、生物濃縮によって相当量の有機結合型トリチウムを摂取する危険性がある。また、海洋エアロゾルや波しぶきにより、トリチウム水が陸上へ移動する可能性も指摘されている。
こうした「実害」発生の可能性から目を背け、風評の問題に矮小化してはならない。
海洋放出の強行は、被災地の人々の10年間にわたる復興への努力を踏みにじるものであり、水産業をはじめとする諸産業に壊滅的な打撃を与える。だが基本方針では、風評被害に対し賠償を実施するよう「東京電力を指導する」との表現にとどまり、国は賠償責任を負っていない。そもそも水産業、農林業は地域環境が汚染されれば生業として成り立たなくなるため、金銭で賠償して済む問題ではない。
私達は政府に対し、海洋放出決定の撤回と、現実的な対応策の再検討を求める。
2021年4月19日
核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会
(東京反核医師の会)
代表委員 向山 新、 矢野 正明、 片倉 和彦
210419福島第一原発 汚染処理水の海洋放出決定に抗議する[PDF:91.7KB]
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