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公開日 2022年06月28日
更新日 2022年06月29日
当会は6月28日、以下の声明を菅野 博之 最高裁判所判事に送付しました。
福島原発集団訴訟 最高裁判決に抗議する
福島第一原子力発電所の事故で各地に避難した人などが、国と東京電力に損害賠償を求めていた福島、群馬、千葉、愛媛4件の集団訴訟で、最高裁判所は2022年6月17日、国の責任を認めないとする判決を下した。
裁判の争点は、(1)国は巨大な津波が来ることを震災前に予測できたか(2)東京電力に有効な対策をとらせていれば事故を防げたか、の二点で、特に国の地震調査研究推進本部が2002年に公表した長期評価と、それに基づいて東京電力の子会社が2008年に行った「最大15.7メートルの津波が福島第一原発に到達する」との試算の信頼性が問題となった。
これに対して菅野博之裁判長は、津波の予見可能性や長期評価の信頼性への直接的な評価を避けた上で、実際に発生した地震も津波も長期評価や試算より規模が大きく、到来した方角も異なるとして、「仮に国が東京電力に必要な措置を命じていたとしても大量の海水の浸入は避けられなかった可能性が高い」と、国の責任を否定した。
だが、これは極めて一方的な決めつけであり、長期評価に基づいて、国や東電が実際にどのような対策を実施し得たのかという考察が全く抜け落ちている。判決に唯一反対した三浦守裁判官が述べているとおり、津波が試算で予想された方角以外からも遡上する可能性は当然想定すべきであり、津波の大きさも相応の幅を持って考えるべきであった。万が一にも深刻な事故が起こらないように、多重的な防護対策を検討するのは国として当然の責務であり、国も東電も適切な対策を検討しなかったことは明らかである。判決は「想定外の災害だったから仕方がない」とする国の主張を無批判に受け入れ、国が国民を守らないことを正当化したものに他ならない。
事故の教訓を導き出すには、責任の所在を明らかにすることが不可欠だ。そうでなければ同様の事故は今後も繰り返されることになる。
東京反核医師の会は、この度の不当判決に抗議するとともに、今後も続く集団訴訟において、司法がその役割を果たし、国の責任を明らかにすることを求める。
2022年6月28日
核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会
(東京反核医師の会)
代表委員 向山 新、 矢野 正明、 片倉 和彦
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