広島市平和教材からの「はだしのゲン」削除に 抗議する

 2-112

公開日 2023年02月28日

 当会は2月28日、以下の声明を広島市教育委員会宛てに送付しました。

 

 

広島市平和教材からの「はだしのゲン」削除に抗議する

 広島市教育委員会は、市立小中高校の平和教育で使われている教材を2023年度に改訂し、漫画「はだしのゲン」の掲載を取りやめることを決めた。
 「はだしのゲン」は故・中沢啓二氏が、自らの被爆体験を基に描いた自伝的漫画である。広島市の小3向け教材では、同作品の中から①主人公のゲンたちが家計を支えるために路上で浪曲を歌って小銭を稼ぐ場面、②身重の母親に食べさせるために、他人の家のコイを捕る場面、③原爆投下で自宅が焼け、下敷きになった父親がゲンに逃げるよう叫ぶ場面、が紹介されている。
 市教委によれば、このうちの①、②について「今の子どもの生活実態に合わない」「誤解を与えるおそれがある」との意見が出たという。しかし戦時下を描いている以上、今の子どもと生活実態が異なるのは当然である。同委の高田尚志課長は、「なぜコイを盗まないといけない状況になったのか。まず浪曲がどういうものか。子どもたちに説明しなければいけない。(中略)ある程度ゆっくりと事実をつかませて、感じさせて、考えさせるという作業が必要なので、少し遠回りするというか、本質に迫る時間が短くなるということが生じる」と述べているが、この「遠回り」こそが、まさに教育の本質であり、戦争や原爆の非人道性を重層的に理解するために必要な作業なのではないか。
 改訂会議議事録によると、意見が出たのは①、②についてであり、またその時点では削除までは議論されていなかったにもかかわらず、次回の会議では①~③の全てが削除されたテキスト案が提出されたという。
掲載内容の大きな変更であれば、より時間をかけて、幅広い意見をつのり、検討すべきではなかったのか。決定に至るプロセスが不透明だと言わざるを得ない。

 「はだしのゲン」には、戦時下の軍国教育の反省・総括は本当になされているのかという、学校教育への批判的な問いも込められている。子どもたちだけでなく、教育者が共に考え学ぶことができる歴史的資料であり、被爆地広島の教材から削除されることの損失は大きい。
 我々は「はだしのゲン」の教材からの削除を撤回することを求める。

2023年2月28日
核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会
(東京反核医師の会)
代表委員 向山 新、 矢野 正明、 片倉 和彦

 

広島市平和教材からの「はだしのゲン」削除に抗議する[PDF:79KB]

 

PDFの閲覧にはAdobe社の無償のソフトウェア「Adobe Acrobat Reader」が必要です。下記のAdobe Acrobat Readerダウンロードページから入手してください。

Adobe Acrobat Readerダウンロード